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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)1171号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人藤原光三の上告趣意第一について。

しかし、当該審級における公判廷における自白は、所論憲法三八条三項にいわゆる本人の自白に含まれないと解すべきことは、当裁判所屡次の判例とするところであるから、刑事判決書においても必ずしもかかる公判廷における自白以外の証拠を明示しなければならないものではない。されば、刑訴施行法一三条に基く旧刑事訴訟法事件の控訴審等における審判の特例に関する規則第五条において「裁判所は控訴申立人に不服のないことが明らかな事項については、事案の真相を明らかにし被告人の権利を保護するため必要と認める場合の外、重ねて、被告人を尋問し、証拠調をすることを要しない。この場合には控訴申立人に不服のない限度において原判決の認定した事実による。」と規定し、同第六条において、「有罪の言渡をする判決において前条の規定により被告人尋問及び証拠調をしなかった事実について事実の摘示及び証拠の説明をするには、原判決の認定した事実のとおりであって、控訴申立人に不服のないことを明らかにすれば足りる。」と規定したからといって前記憲法の条項に反する道理がない。従って、所論は、結局単なる訴訟法違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の適法な上告理由とは認め難い。

同第二点について。

所論は、原判決の認定した事実の誤認並びにこれを前提とする法令違反の主張と解されるから刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらないし、同四一一条を適用すべきものとも認められない。

よって刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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